白山国立公園｜体験しよう日本の国立公園

白山国立公園は、御前峰（ごぜんがみね・2,702m）、大汝峰（おおなんじみね・2,684m）、剣ヶ峰（けんがみね・2,677m）の三つの主な山を中心に、南北約40km、東西約30kmに広がる広大な自然公園です。標高1,600mより低い山のふもとには、ブナをはじめとした自然のままの森が広がっています。さらに、標高の高い高山帯や亜高山帯では、ハクサンフウロやクロユリといった高山植物が約250種類も見られ、手つかずの自然が今も大切に守られています。この地域は、ツキノワグマやニホンカモシカ、イヌワシなどの大型の野生動物も暮らす貴重な生息地であり、日本でも特に自然度の高い国立公園として、ユネスコの「人間と生物圏（MAB）計画」に基づき、生物圏保存地域（ユネスコエコパーク）に指定されています。冬になると白山は、日本海からの季節風により大量の雪に覆われます。標高500m以上の地域には、合計で約6億トンもの雪が積もると考えられており、この雪が白山の自然を育む大きな要因となっています。豊富な雪は山のふもとに恵みをもたらし、この地域独特の雪景色や文化も生み出しています。

フィールドイメージ

主峰・御前峰を中心に、大汝峰や剣ヶ峰が山頂部を構成し、周囲には翠ヶ池、紺屋ヶ池、千蛇ヶ池など新白山火山の火口湖が点在しています。これらと、火山砕屑物や溶岩によってできた室堂平、弥陀ヶ原、南竜ヶ馬場といった平坦地が調和し、白山ならではの優美な火山風景を形づくっています。

山の大部分は、ジュラ紀から白亜紀にかけて堆積した手取層群などの古い地層や濃飛流紋岩類から成り、その上に火山噴出物が重なって現在の白山火山を形成しています。この手取層群からは恐竜や哺乳類、植物など多様な化石が発見されており、学術的にも非常に重要な地域です。

山麓から亜高山帯にかけてはブナやダケカンバ、オオシラビソなどの森林が広がり、登山道沿いには原生的な森が残されています。標高2,400mを超える高山帯ではハイマツが生育し、白山の火山地形とともに、多様で豊かな自然環境を支えています。

白山では、標高や地形、雪どけの時期などの違いによってさまざまな環境が生まれ、それぞれに適した高山植物が生育しています。7～8月の夏山シーズンには、ハクサンフウロやゴゼンタチバナをはじめ、色とりどりの花々が一斉に咲き誇り、南竜ヶ馬場や室堂周辺などでは見事なお花畑が広がります。

白山は、本格的な高山帯をもつ山としては日本最西端に位置しており、ここにはハクサンコザクラやクロユリをはじめ、ハイマツ、オオシラビソ、アオノツガザクラなど多様な高山植物が生育しています。これらの植物は、白山の冷涼な気候や独特の地形、雪渓や湿地といった環境によって支えられており、その多くがこの地を分布の西限としています。南竜ヶ馬場や室堂周辺、お花松原などでは、こうした植物が群落をつくり、白山ならではの美しい風景を彩っています。

白山では、ブナを中心にミズナラやトチノキ、カエデ類が混じる広大な広葉樹林が広がり、ツキノワグマ、ニホンカモシカ、ニホンザルなどの大型哺乳類や、イヌワシ、クマタカといった希少な猛禽類が全国的にも高い密度で生息しています。また、高山帯からブナ林にかけてはホンドオコジョが分布し、山頂付近の岩場ではイワヒバリのさえずりが聞かれます。これらのほか、アズミトガリネズミなど、白山を分布の西限とする高山性動物も見られ、白山の自然環境の特異性を物語っています。

白山は、養老元年（717年）に越前の僧・泰澄大師によって開山され、富士山・立山とともに日本三名山の一つとして知られています。周囲に高い山がなく北陸や東海、近畿からも望めるその姿は、古くから神の山として崇拝されてきました。御前峰には白山比咩神社の奥宮が鎮座し、全国に三千社を超える白山神社の総本宮として多くの信仰を集めています。

山麓には歴史を感じさせる白峰重要伝統的建造物群保存地区があり、古い宿坊や町並みが保存されています。また、白山中居神社は白山信仰の中心的な神社で、参拝者の拠点となっています。自然の見どころとしては、国の特別天然記念物である石徹白のスギや、迫力ある百四丈滝、名勝に指定された白水滝、そして石川県の天然記念物・百万貫の岩などがあります。

登山道では、白山の霊場としての歴史を感じながら、自然豊かな散策を楽しめます。特に「お池巡り」は、火口湖や湿地帯をめぐるコースで、季節ごとに変わる植物や野鳥の姿を観察できます。岩屋俣谷園地では、静かな森林浴が楽しめ、清らかな沢のせせらぎが心を癒します。また、登山道の周辺には、ブナを中心とした原生林が広がり、深い緑の中を歩くことで四季の移ろいを肌で感じられます。美しい白水湖は、登山の疲れを癒す絶好の休憩スポットで、湖面に映る山々の景色は格別です。これらの自然の見どころを巡ることで、白山の豊かな自然環境と歴史的な背景が一体となった独特の魅力を体験できます。

白山登山は四季折々の自然が楽しめる人気のアクティビティです。高山植物の花々や秋の紅葉が彩る登山道には休憩所や山小屋が整備され、初心者からベテランまで安心して楽しめます。山頂からは日本海や遠くの山々が望める大パノラマが広がり、登山後には温泉や地元の特産品を味わいながら、自然と文化を満喫できる充実した体験が待っています。